【体験談】古民家じゃない「農泊」でワーケーション!仕事と自然体験のリアルレビュー
はじめに
ワーケーション先として、リゾートホテルやコワーキングスペース併設の施設はよく耳にしますが、「農泊」という選択肢はいかがでしょうか。農泊とは、農山漁村地域で営まれる、古民家を活用した宿泊施設や、一般の農家さんの家に宿泊する形態を指します。今回は、私が実際に体験した農泊ワーケーションについて、特に仕事環境と自然体験の両立という観点から、リアルなレビューをお届けしたいと思います。
Webデザイナーとして普段は都心でリモートワークをしている私が、なぜ農泊を選んだのか。それは、日常から完全に離れた環境で、心身のリフレッシュと同時に、地域ならではの体験を通じて新たなインスピレーションを得たいと考えたからです。しかし、初めての農泊、そしてそこで仕事をするということには、漠然とした不安もありました。「ネット環境は大丈夫だろうか」「作業スペースはあるのだろうか」「地域の方との関わりはどの程度あるのだろうか」といった疑問を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。この記事が、そんな皆様の参考になれば幸いです。
今回体験した農泊施設
今回私が訪れたのは、関東地方の、とある里山にある農家民宿です。いわゆる「古民家再生」のようなスタイリッシュな宿ではなく、昔ながらの民家の一部を宿泊用に開放しているタイプの施設でした。
- 立地: 最寄り駅から車で30分ほど。周囲は田畑が広がり、遠くに山並みが見える、絵に描いたような日本の原風景の中にありました。コンビニや商店までは車で10分程度かかります。
- 施設タイプ: 一軒家の一部を間借りするような形式。個室として和室が提供され、リビングやキッチン、お風呂などはホストファミリーと共有するスタイルです。
- 受け入れ体制: ホストファミリーは、代々この土地で農業を営んでいるご夫婦。とても温かく迎えてくださいました。
農泊ワーケーションのリアル:仕事環境編
まず、ワーケーションにおいて最も気になる仕事環境について詳細にレビューします。Webデザイナーとして、普段使用するツール(Adobe Photoshop, Illustratorなど)やクラウドサービスを利用するため、安定したネット環境と十分な作業スペースは必須です。
1. ネット環境
正直なところ、これが一番の懸念事項でした。事前に施設の方に問い合わせたところ、「Wi-Fiはありますが、都会ほど速くはないかもしれません」とのこと。結果としては、以下のような状況でした。
- Wi-Fiの速度: 通信速度測定サイトで計測したところ、ダウンロード・アップロードともに下り10〜20Mbps程度、上り数Mbps程度でした。これは、都心の光回線などと比較するとかなり遅いです。
- 安定性: 日中は比較的安定していましたが、家族が動画視聴などをしている時間帯は速度が低下する傾向がありました。また、雷雨の日は一時的に接続が不安定になることもありました。
- 実際の作業への影響:
- メール送受信、チャットツール(Slack, Microsoft Teams)の利用、Web会議(Zoomなど)は問題なく行えました。ただし、画面共有時に若干遅延を感じることはありました。
- Webサイトの閲覧やリサーチはスムーズでした。
- 大容量のデザインファイル(数十MB以上)のクラウドストレージへのアップロードやダウンロードには時間がかかりました。特に動画編集や高解像度画像のやり取りが多い方にはストレスになる可能性があります。
- ファームウェアアップデートやOSのアップデートなど、大量のデータ通信を伴う作業は、夜間や早朝など回線が空いている時間を選ぶ必要がありました。
結論: 一般的なリモートワーク(テキストベースのコミュニケーション中心、Web会議、ブラウザ作業)であれば問題なく対応できますが、大容量データ通信が頻繁に発生する専門職(動画編集者、3Dデザイナーなど)にとっては、事前の確認と対策(テザリングの準備など)が必要だと感じました。
2. 作業スペース
提供された個室は和室で、座卓と座椅子がありました。
- 机と椅子: 座卓は広く、ノートPCとマウス、資料などを置くのに十分な広さでした。座椅子は長時間の作業には向いているとは言えず、適度に休憩を挟んだり、姿勢を変えたりする必要がありました。畳の上で直接作業するのもありでした。
- 電源: 部屋の隅にコンセントが2箇所ありました。延長コードを持参していたので、特に不便はありませんでした。
- 照明: 部屋の照明は明るかったですが、夜間の手元作業には少し物足りなさを感じることもありました。デスクライトがあるとより快適かもしれません。
- プライバシー・静寂性: 個室は確保されていますが、他のゲストやホストファミリーの声、生活音は聞こえてきます。完全に遮断された静寂を求める方には向かないかもしれません。一方で、人の気配が適度にあることで安心感を得られるという側面もあります。
3. その他の仕事関連要素
- 備品: プリンターやスキャナーなどのOA機器はありません。必要な場合は事前に確認が必要です。
- セキュリティ: Wi-Fiはパスワードで保護されていましたが、共用であることを理解し、重要な情報へのアクセス時にはVPNを利用するなど、最低限のセキュリティ対策は自身で行う必要があります。
農泊ワーケーションのリアル:自然体験と暮らし編
仕事の合間や終業後に体験した自然や地域との関わりについてです。これが農泊ワーケーションの醍醐味と言えるでしょう。
1. 自然体験とリフレッシュ
- 環境: 窓を開けると、風に乗って土の匂いや草木の香りが心地よく漂ってきます。朝は鳥のさえずりで目覚め、夜は満天の星空を眺めることができます。都会の喧騒から離れた静けさは、仕事の集中力を高めると同時に、素晴らしいリフレッシュになりました。
- 農業体験: 滞在中に、ホストファミリーのお手伝いとして、畑の草むしりや野菜の収穫を少しだけ体験させていただきました。簡単な作業でしたが、土に触れ、植物の成長を間近に感じる時間は、普段のデスクワークでは得られない貴重な経験でした。採れたての野菜をその日の食卓でいただく喜びも格別です。
- 散策: 仕事の休憩時間や終業後に、周囲の田んぼ道や里山を散歩しました。四季折々の風景の変化を肌で感じることができ、頭の中が整理されたり、新しいアイデアがひらめいたりすることも。
2. 地域との交流
- ホストファミリーとの交流: 食事を共にしながら、地域の歴史や暮らしについて色々な話を伺うことができました。観光情報誌には載っていないような、地元の人ならではの視点や、農業に対する情熱に触れることは、大変刺激的でした。私の仕事についても興味を持って聞いてくださり、交流を通じて視野が広がったと感じています。
- 地域の方との交流: 滞在中、近所のお祭りや集まりに誘っていただく機会はありませんでしたが、道を歩いていると地域の方が気軽に声をかけてくださり、短い立ち話をするなど、温かい人情に触れることができました。
3. 食事と生活
- 食事: 朝食と夕食をホストファミリーと共にいただきました。地元の新鮮な野菜や採れたての米を使った手作りの家庭料理は、どれも素朴ながらも滋味深く、心身ともに満たされました。昼食は近くの小さな食堂を利用したり、前日の残り物をお弁当にしたりと工夫しました。
- 生活: 生活リズムは、ホストファミリーに合わせて、早寝早起きになりました。これは、自然のリズムに近い生活を送る上で非常に心地よかったです。お風呂や洗濯機は共用でしたが、時間を調整すれば特に不便はありませんでした。
農泊ワーケーションのメリット・デメリット
今回の体験を通じて感じた、農泊ワーケーションのメリットとデメリットをまとめます。
メリット
- 圧倒的なリフレッシュ効果: 自然豊かな環境と、日々の暮らしから離れることで、心身ともにリフレッシュできます。
- 地域との深い交流: ホストファミリーや地域の方との交流を通じて、その土地の文化や暮らしを深く知ることができます。
- 新たなインスピレーション: 非日常的な環境や体験、人との出会いが、仕事や自身のキャリアについて新たな視点や気づきを与えてくれます。
- 美味しい地元食材: 採れたての新鮮な食材を使った食事を楽しむことができます。
- コスパが良い場合も: 施設によっては、ホテルやリゾート施設に比べて安価に長期滞在できる可能性があります。
デメリット・注意点
- 仕事環境の不確実性: ネット環境や作業スペースが、都市部の施設のように整備されていない場合があります。事前の確認と対策は必須です。
- プライバシー: 共用スペースが多いため、完全に一人になりたい、絶対的なプライバシーを確保したい、という方には不向きかもしれません。
- 利便性: 買い物や外食などの選択肢が限られたり、移動に車が必要になったりする場合があります。
- 地域との関わり方: 地域によっては濃密な交流がある場合もあります。自分のペースや関わりたい度合いを事前に考慮する必要があります。
- 自然の影響: 天候や虫など、自然環境特有の影響を受けやすい場合があります。
こんな方におすすめの農泊ワーケーション
- 自然の中でリフレッシュしたい方
- 地域の人々との交流に興味がある方
- 普段の仕事や生活にマンネリを感じており、新しい刺激を求めている方
- ローカルな暮らしや文化に触れてみたい方
- 大容量データ通信が少なく、比較的シンプルなリモートワークが中心の方
まとめ:農泊ワーケーションで得られたもの
初めて体験した農泊ワーケーションは、私にとって非常に価値のある時間でした。ネット環境や作業スペースにおいては、都心のワーケーション施設ほどの快適さはありませんでしたが、それを補って余りあるほどの「非日常体験」と「地域との温かい交流」がありました。
特に、農業体験を通じて自然のリズムを感じたり、ホストファミリーの生活に触れたりする中で、普段PCとにらめっこしているだけでは決して得られない、地に足のついた感覚や、仕事への新たなモチベーションを得ることができたと感じています。
もちろん、仕事内容によっては農泊が最適ではない場合もあります。しかし、もしあなたがリモートワークの場所に変化を求めている、地域とのつながりに興味がある、あるいは自然の中で心身をリフレッシュしたいと考えているのであれば、農泊ワーケーションは検討する価値のある選択肢の一つだと思います。
大切なのは、ご自身の仕事内容や求める環境を事前にしっかりと把握し、施設の情報を可能な限り収集することです。そして、地域の方々への敬意を持ち、積極的にコミュニケーションを取る姿勢があれば、きっと素晴らしい体験ができるはずです。
この記事が、あなたのワーケーション計画の一助となれば幸いです。